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構造分析(3)-三つ子の魂、百まで

前回、交流分析では心の姿をP(ペアレント:親の心)、A(アダルト:大人の心)、C(チャイルド:子供の心))の3つに区分してとらえること、そして、誰もが3つの心は持っていることを述べました。

(ペアレント:親の心) ・・・人の世話をやいたり、褒めたり、叱ったりなど、あたかも親のようにふるまう自我状態
(アダルト:成人の心) ・・・周囲の状況を観察して適切に判断、合理的、計画的な考え、行動する大人のような自我状態。
(チャイルド:子供の心)・・・相手よりも自分中心にやりたいことをしたり、周囲からどのように思われているかを気にする子供のような自我状態

「三つ子の魂、百まで」といわれるように、幼いころに身につけた性格や性質は年をとってもなかなか変わりません。幼少期に身につけた考え方や感情は、成人してからもその人の生き方に大きな影響を与えています。
交流分析では、対人関係や物事に対する価値観、感情などがどのように発達形成されたかを分析することを「構造分析」といいます。
交流分析では3つの自我が、次のような過程を経て形成されると考えています。

人が誕生した時には「子供のC(チャイルド)」の自我状態で生まれてきます。一番最初に形成されるのが、C(チャイルド)の自我です。子供は無邪気で明るく、わがままです。また自分ひとりで生きることができないため、人に従ったり、時に反抗したりします。
幼児期の親(特に母親)とのふれあいが、その後の他人や人生に対する価値観の形成に大きな影響を与えています。赤ちゃんは親との関係を通して自分は愛されている、かけがいのない存在であると感じ、信頼感を持ちます。さらに親を通して自分や他人に対する信頼感を持ちます。
そのような体験を通して「自分は世の中に受け入れられているんだ、信頼してもいいんだ」(I am OK.You are OK)といった「基本的信頼感」(basic trust)を形成します。「基本的信頼感」を欠くと、自分自身を否定的に受けとめ、自分や他人を信じることができず、成人してからも人と信頼関係を築くことが難しくなるといわれています。

次に形成される自我が「親のP(ペアレント)」です。
生まれて数か月もすると、親や兄弟が自分と異なる存在であることを分かってきます。周囲にいる人とふれあうことで、その人の感じ方や考え方、行動などを自分に取り入れ、P(ペアレント)の自我が形成されていきます。子供を見ると、「どこで学んだろうか?」と思うくらい親そっくりです。P(ペアレント)の自我状態は12才くらいに形成されるといわれます。

最後に形成される自我が「成人のA(アダルト)」です。
2歳くらいから親のまねをしたり、保育園等の幼児教育施設に入る年齢になると数の数え方や挨拶のやり方を覚えていきます。周りの人のパーソナリティーを自分の自我にファイルする過程を通して、「成人のA(アダルト)」が形成されます。A(アダルト)がきちんと使えるようになるのは、12才頃といわれています。
なお、A(アダルト)はその後も経験や知識を重ねることによって、成長してきます。

P・A・Cの三つの自我が発達して自分の価値観や考えを持つようになり、その人らしさが現れてきます。そして、一個人としての自我へ発達することによって反抗期がはじまります。

自我の発展過程


人間の性格形成には幼い頃の養育者(特に母親)から大きな影響を受けています。まさに「三つ子の魂、百まで」です。それは家の建築と似ています。
家を建てるには、大きく2つのやり方があります。土地の上にそのまま家を建てる場合と、土地を固めてしっかりした地盤を作った上で家を建てる場合です。両方とも同じ家は建つのですが、地震や風雪に耐えて長持ちするのはやはりしっかりした基盤の上に建てられた家です。
自分の中にしっかりした基盤(「基本的信頼感」)が形成されていると、その後多少の苦労や困難があってもそれに適応して生きていくことができます。

基本的信頼感

「構造分析」(3)  by TEAM KAMATAMA


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構造分析(2)-コロコロ変わるココロ

「遊ぼう」っていうと「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと「遊ばない」っていう。
そうして、あとで さみしくなって、
「ごめんね」っていうと「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、 いいえ、誰でも。

(童謡詩人金子みすゞ「こだまでしょうか」)

少し前にCMでよく流れていた詩です。

「女心と秋の空」といいますが、女心に限らず、人の心はコロコロ変わるものです。
例えば、さっきまで落ち込んでいたのに、好きな人に笑顔で挨拶されたら気分が良くなります。
人の心はその時その場の状況によって様々な「心の姿」が現れます。

また、「無くて七癖、あって四十八癖」といわれるように、誰にでも癖があります。これは目に見える仕草や態度だけでなく、目に見えない心にも癖があります。
例えば、私たちは「あの人は、コンピューターのような人だ」、「○○さんがそのような人とは思わなかった」などといって、人を何らかのタイプに当てはめて見ています。
人はそれぞれ特有の考え方や行動を持っています。そのような「心の癖」が個性や人格であり、その人らしさです。

人の心が一つであれば単純で分かりやすいのですが、状況によってコロコロと変わり、様々な現れ方をします。それでいて、人それぞれが独特の個性(特有の考えや行動、感情)を持っています。
人間の「心の姿」はつかみどころがなく、複雑なものです。


交流分析ではそのようなコロコロと変わる「心の姿」を3つに分けてで考えています。

「心の姿」を3つに分けて考えると理解しやすくなります

心は3つ

P(ペアレント:親の心) ・・・人の世話をやいたり、褒めたり、叱ったりなど、あたかも親のようにふるまう自我状態

A(アダルト:成人の心) ・・・周囲の状況を観察して適切に判断し、合理的、計画的に考えて行動する成人の大人のような自我状態

C(チャイルド:子供の心) ・・・相手よりも自分中心にやりたいことをやったり、周囲からどのように思われているかを気にする子供のような自我状態

交流分析では、心は一つでなく誰もが心の中に「3つの心(親の心、成人の心、子供の心)」を持っていると考えます。
交流分析では状況によってコロコロと変化する心の姿を「自我状態」と表現しています。


対人関係をより良く変えてくためには、他人を変えようとするよりも、まず自分自身を知ることが大切です。私たちは自分のことは自分が一番よく知っていると思っていますが、案外よく分かっていません。
交流分析は自分自身を知るために役立ちます。

まずは自分についてじっくりと考えてみることが大切です。
考える人 


「構造分析」(2)  by TEAM KAMATAMA


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構造分析(1)

構造分析(1)-ジョハリの4つの窓

私たちは日常多くの人と関わりながら生活を送っています。特に会社等の組織の中で仕事をしている場合には、いつも一緒に働く人との人間関係の良し悪しが重要になります。
人間関係が上手くいっていると、大変な仕事であっても頑張ることができます。逆に、人間関係が悪いと、好きな仕事であっても職場に行くのさえ、憂鬱で嫌になってしまいます。
仕事が楽しければ人生は充実したものになるが、仕事がつまらなければ人生は苦行になります。
仕事をしているのは生活の糧を得るためにしている面もあるけれども、それだけではありません。仕事上の人間関係の良し悪しが、充実した生活の良し悪しにも大きくつながっています。

その人間関係を支えているのが「対人コミュニケーション」です。それを理解する時に参考になる考え方として、ジョハリの「心の4つの窓」があります。これは人が他人とかかわる場合に、自分をどの程度表しているかをマトリクスにしたものです。

ちなみにジョハリというのは心理学者ジョセフ・ルフト (Joseph Luft) とハリー・インガム (Harry Ingham) という2人の名前です。2人が同じ頃(1955年頃)に考案したので、2人の名前を合わせてこう呼ばれています(ジョハリという人ではありません)。

4つの窓は、「自分が知っている・知らない」と「他人が知っている・知らない」という2つの視点から分類しています。

ジョハリの窓1
第1の窓は『開放された窓』:自分自身が知っていて、他人も知っている自己の部分
第2の窓は『盲点の窓』:自分自身は知らないが、他人は知っている自己の部分
第3の窓は『隠された窓』:自分自身は知っているが、他人は知らない自己の部分
第4の窓は『未知の窓』:自分自身も知らないし、他人も知らない「知られざる」自己の部分


スムーズな「対人コミュニケーション」を行うためには、第1の『開放された窓』を大きくすることが大切になります。
それは「自分自身は気づいていないが他人は分かっている自己」(盲点の窓)と「自分自身は分かっているが他人には理解されていない自己」(隠された窓)を小さくしていくことです。

ジョハリの窓2

そのためには、
①他人に自分を理解してもらうこと
②自分が自分自身を理解すること
の両面からの努力が必要になります。

相手とお互い話をしたり接する時間を持つこと(「自己開放すること」)で、相手が自分のことを理解し『隠された窓』が小さくなります。
また、相手から自分に対する話を素直に聞くこと(「フィードバックを受けること」)で、「自分でも知らない自分」への気づきを得て、『盲点の窓』が小さくなります。
その結果、『開放された窓』が大きくなり、相手とのスムーズなコミュニケーションが取れるようになります。


そうはいっても、自分のことを相手に理解してもらうのは大変難しいことで、誰もが悩んでいることです。
自分のことを人に理解してもらうよりは、先に自分ことを自分で理解する方(自己理解)が早道だと思います。

しかし、自分のことは自分が一番知っているようでいて、案外よく分かっていないものです。

自分で自分を知る(自己理解)ためには、様々な方法があります。その一つとして「交流分析」があります。交流分析を知ることは、「自分で自分を理解すること」(自己理解)につながります。

次回は交流分析の「構造分析(心の姿を知る)」の記事を書きます。



mado 
窓の向こうに何が見える?


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交流分析とは(3)

交流分析とは(3)

交流分析の前提となる考え方(哲学)の一つとして、「人は誰でも考える力を持っており、自分の人生は自ら決めることができ、その決定は変えることができる」を以前に述べました。その結果として、「自律性の確立」していきます。

「じりつ」を漢字で現すと、「自立」「自律」があります。
似たような意味ですが辞書を見ると、次のような違いが書かれています。

自立:他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること。
自律:他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。自らの意志によって普遍的道徳法則を立てこれに従うこと。

「自立」は経済的、物理的に独立する意味が強く、「自律」は自分の意思や行動をセルフコントロールする意味が強いようです。

また、自律とは逆の言葉で、「他律」という言葉もあります。

他律:自らの意志によらず、他からの命令、強制によって行動すること。

交流分析では、自らの意思や考えに基づいて自ら行動する「自律」の確立を目的としています。つまり、人に決められてやるのでなく、自ら考え、自ら決め、自ら行動できるようになろう、ということです。

過去と他人は

というのが、交流分析の基本姿勢です。


☆    ☆    ☆

事業経営(仕事)においても健全に成長するためには、「自律の精神(意思)」が必要です。

いくら外部のコンサルタントが良い提案やアドバイスをしても、それを決めて実行するのはクライアントです。外部の人間ができるのは決断や実行のサポートまでです。

そのような点においては、コンサルタントは医者に似ています。医者がいくら病気の患者を治そうと精一杯の努力をしても、患者自らが治そうとする意志と行動がなければどうすることもできません。

事業経営や仕事においても、コンサルタントから言われた、上から命令された、ということで事業経営(仕事)を考えているようでは、よい経営(仕事)はできません。 自らが主体的に良くしようと考え、実行することが大切です。

社員数が多くなったり、経営者が交代してくると、知らず知らずの内に他律的な考えとなり、事なかれ主義になりがちです。しかし、事業経営は決してそうあってはならないと思います。

事業経営においても自らが考え、行動しようとする「自律の精神(意思)」が大切です。


『自主経営のない人は依存経営になります。それでは「共存共栄」になりません。助けられてするということはいつか破綻します。自主経営は相手から与えられるものではない。自主経営は自分でするものです』
(松下幸之助:昭和39年(1964年)10月販売店会議(熱海会談)での言葉)

『時間は限られているのだから、ほかの誰かの人生を生きることでそれを無駄にしてはいけない。・・・ 自分の内なる声を他人の意見でかき消されないようにしよう』
(スティーブ・ジョブズ)


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交流分析とは(2)

交流分析とは(2)

交流分析は、従来は心理療法やカウンセリングなどの医療(クリニカル)の場で活用されてきました。最近では学校や企業の職場等の非医療(ノンクリニカル) の場で多く活用され、様々な人間関係の問題の解決等に役立っています。

そして、交流分析(TA)は7つの分野(4つの分析+3つの理論)から成り立っています。

7つの分野<4つの分析+3つの理論>
1.構造分析 (心の姿を知る)
2.対話分析 (やり取りの仕方を知る)
3.ストローク理論 (認め合いを知る)
4.人生態度理論 (人生に対する構えを知る)
5.ゲーム分析 (人間関係を知る)
6.時間の構造化理論 (時間の過ごし方を知る)
7.人生脚本分析 (人生の脚本を知る)



前回、交流分析(TA)の前提となる基本哲学(考え方)の一つとして、「人は誰でも価値ある存在であり、誰でもOK(I am OK.You are OK)である」ということを述べましたが、少し詳しく説明をします。

人は自分や他人、世の中の様々な出来事に対して、その人独特の見方や感じ方、行動をしています。
その背景には、自分自身と他人との関係をどのように感じて、どのように考え、行動しているか、このような他人や人生に対する基本的な心の構え(価値観や人生観)があります。自分自身が自分あるいは他人に対して、肯定的(OKである)に捉えるか、否定的(OKでない)に捉えるかによって、その人の行動や感情が変わってきます。そして、そのような基本的な心の構えが、その人の生き方(人生)にも大きな影響を与えています。

交流分析では、人は誰でも喜んでこの世に生をうけたものであり、「人は誰でも価値ある存在であり、誰でもOK(I am OK.You are OK)である」との立場をとっています。自他ともに肯定的な心の構えを持つことで、自分に対しては前向きな姿勢で臨み、他人とは共感的な生き方をして、健全な人間関係を築こうと考えています。


☆    ☆    ☆

このような考え方は経営コンサルタントがクライアントへ向かう構え(感情、考え方、行動)と共通しています。

コンサルティングをしていると、多くの経営者や役員と交流をします。仕事を通して多くの人と親密な人間関係が築かれます。その中で感じることは、企業や団体の経営に携わる人は、総じて個性的で独特な性格を持った人たちが多いということです。言い方を変えれば、毒にも薬にもなる人であり、どこか尖ったものを持っている人たちです。人として完全かというとそうではなく、むしろ欠点や短所を多く持った不完全な人といえるかもしれません。しかし一方で、そのような個性を持った人だからこそ、多くの人がその人について行きます。

個性とは短所も長所も合わせたものであり、それがその人の魅力だと思います。
そのようなことを考えると、
人の性格はコインの表と裏
だなぁと実感します。

表面から見れば長所に見えるが、裏面から見れば短所に見える。しかし、表面から見ようが裏面から見ようが、それは同じ一枚のコインです。

違っても良い
違っていても良いところがある

経営コンサルタントは良いところ(長所)だけでなく、そうでないところ(短所)も合わせて、一人の魅力ある人間として見ることが大切だと思います。
(自分も同じ不完全な人間であるのだから・・・。)

経営コンサルタントがクライアントへ向かう構えと、交流分析の「人は誰でも価値ある存在であり、誰でもOK(I am OK.You are OK)である」という考え方は共通しています。


本田宗一郎とともに“世界のホンダ“の基盤を作った藤沢武夫が、本田宗一郎について次のように言っています。

『社長には、むしろ欠点が必要です。欠点があるから魅力がある。・・・私のほうが欠点は少ないでしょう。だが、そのぶん魅力がない。だから社長業は落第です。』(藤沢武夫)

交流分析とは(2) by TEAM KAMATAMA


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