なぜ経営理念が必要か(7)-理念を心に描く
前回は中小企業であっても経営理念の作成と浸透が可能であることを事例でご紹介しました。
しかし、現実を見ると理念や方針がきちんと作られている中小企業は多くありません。一方、中堅・大手企業ではすべてきちんと作られています(その中身は別として・・・)。
なぜ、中小企業では理念や方針が作られないのか あるいは作っただけになってしまっているのか?
それは経営理念は重要だと思いながらも、急ぎの業務に追われ、その優先順位が下がることにあります。
重要度よりも緊急度が優先されています。
重要度<緊急度
中小企業では直ぐに対応しなければならない急ぎのことが毎日のように発生します。さらに、重要度の高いことに取り組む人材の余裕がありません。急ぎの業務に対応することで精一杯の状態です。
目の前の急ぎの小さなことにとらわれ過ぎて、本当に重要なことを見失っている。
それが中小企業の現状です。
それを打開するには、まず次のようなマトリクス表で取り組むべきことを整理してみるとよいと思います。
<重要度と緊急度のマトリクス>
「緊急度が高く重要度も高いこと」を優先するのは当たり前で、このエリアにあるものは誰でもすぐに取り組みます。 また「緊急度が高く重要度が低いこと」もすぐに取り組みます。
問題なのは「緊急度が低く重要が高い」エリアににあるものです。経営理念の作成・浸透はこのエリアに入ります。
このエリアにあるものは、「緊急度という下りのエスカレーター」に乗っているようなものです。 そのまま放置しておくと重要なことは、緊急なことに飲み込まれてしまいます。重要なことの優先順位が下がり、やがて消えて無くなります。
それを防ぐためには「緊急度という下りのエスカレーター」に楔(くさび)を打ち込むことです。
そのためには、次の2点がポイントになります。
1.「時間と場所」を設定すること
2.「心に描くこと」
例えば、前回の事例でご紹介したA社では、なぜわざわざ泊まり込みをして経営理念・方針づくりに取り組んだのか?
作るだけであれば宿泊施設に3日間泊まる必要はありません。
そのような取り組みをしたのは、経営理念・方針の作成を経営の最重要課題として優先順位が下がらないようにして、「経営理念を心に描き、自分たちのものとする」ためです。
そこで、まず『時間と場所』を設定しました。
時間:三日三晩の宿泊
場所:社外の宿泊施設
『時間と場所』を決めることで「緊急度という下りのエスカレーター」に楔(くさび)を打ち込み、自らやらざるおえない状況に追い込んだのです。
普段の業務を離れた場所で実施するため、よほどの緊急事項でない限り外部からの連絡が入りません。3日間を経営理念・方針の作成だけに集中できる環境をつくりました。
そのように言うと多くの中小企業経営者は、「忙しくて3日も時間が取れない」と言います。
しかし、よく考えてみてください。10年後の自分達の将来の姿を描くためのたった3日間です。3650日(=10年×356日)の内の3日で、割合でみると僅か0.08%の時間です。まさに一瞬です。
事例で取り上げたA社では、たった3日間でしたが自社を再生するという得がたい3日間になりました。そして、10年以上経った今も会社が存続し、 順調に事業経営がされています。
まさに、10年の計はこの3日間にありました。
次は、経営理念を『心に描くこと』です。
心に描かざるものは実現しない。
書かざるものは実現しない。
語らざるものは実現しない。
行動せざるものは実現しない。
ものごとを実現するためには「描き、書き、語り、行動する」ことが大切です(個人にとっても同じ)。
特に経営理念の作成・浸透で大事なことは、それを『心に描くこと』です。
経営理念を作成すれば、どの会社もそれを書いて文章にします。書いたものを掲示したり、社員にカードで配ったりします。
しかし、経営理念を経営陣や社員の「心に描くこと」に取り組む会社は少ない。
書くことはしても、心に描くことをしなければ効果はない。
「心に描くこと」とは、本当に大切だということを気持ちで感じることです。自分が本当に大切だと感じていないことは、消えてなくなってしまう。
例えば、人は約束を忘れても、食べ物を食べることは忘れない。食べることは自分が生命を維持し、生きていくために極めて重要なことだからです。お腹がすいたら「食べたい」と感じる。頭で理解するのでなく、気持ち(心)で感じる。
「心に描くとは」頭で理解することでなく、自分のこととして心で感じることです。
そのためには「内省すること」が大切です。
自社及び自己の現状を深く見つめ直すことです。
前話で紹介したA社では、事業の存在意義、理念を内省する討議を通して、組織の理念が自分達の存在意義、生き方へと昇華させていきました。
また以前に事例で取り上げたジョンソン&ジョンソンでは、クレドー・チャレンジミーティング(クレドに関する議論)やクレドー・サーベイ(社員意識調査)を通して、全社員が経営理念を内省し、見直す取り組みをしています。
内省してる?
これまでの自社(自己)・・・現状を内省する(認識する)
自社(自己)の存在意義・・・存在価値を内省する(問い直す)
これからの自社(自己)・・・将来(理念・方針)をつくる
経営陣が語り合い、経営理念をしっかりと「心に描くこと」ができた時、それが自分達の存在意義へと変化する。
そして、バラバラの人の集団が一枚岩の組織(コミュニティ)へと生まれ変わり、将来へ進むための熱意と推進力が生まれます。
『小利を見れば則ち大事成らず』(論語)
(目の前の小さな利益にとらわれると、本当に重要なことが見失われる)
『組織は熱意あふれる人間のコミュニティとなったとき、最もうまく機能する』(ヘンリー・ミンツバーグ)
「なぜ経営理念が必要か」(7) by TEAM KAMATAMA

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しかし、現実を見ると理念や方針がきちんと作られている中小企業は多くありません。一方、中堅・大手企業ではすべてきちんと作られています(その中身は別として・・・)。
なぜ、中小企業では理念や方針が作られないのか あるいは作っただけになってしまっているのか?
それは経営理念は重要だと思いながらも、急ぎの業務に追われ、その優先順位が下がることにあります。
重要度よりも緊急度が優先されています。
重要度<緊急度
中小企業では直ぐに対応しなければならない急ぎのことが毎日のように発生します。さらに、重要度の高いことに取り組む人材の余裕がありません。急ぎの業務に対応することで精一杯の状態です。
目の前の急ぎの小さなことにとらわれ過ぎて、本当に重要なことを見失っている。
それが中小企業の現状です。
それを打開するには、まず次のようなマトリクス表で取り組むべきことを整理してみるとよいと思います。
<重要度と緊急度のマトリクス>

「緊急度が高く重要度も高いこと」を優先するのは当たり前で、このエリアにあるものは誰でもすぐに取り組みます。 また「緊急度が高く重要度が低いこと」もすぐに取り組みます。
問題なのは「緊急度が低く重要が高い」エリアににあるものです。経営理念の作成・浸透はこのエリアに入ります。
このエリアにあるものは、「緊急度という下りのエスカレーター」に乗っているようなものです。 そのまま放置しておくと重要なことは、緊急なことに飲み込まれてしまいます。重要なことの優先順位が下がり、やがて消えて無くなります。

それを防ぐためには「緊急度という下りのエスカレーター」に楔(くさび)を打ち込むことです。
そのためには、次の2点がポイントになります。
1.「時間と場所」を設定すること
2.「心に描くこと」
例えば、前回の事例でご紹介したA社では、なぜわざわざ泊まり込みをして経営理念・方針づくりに取り組んだのか?
作るだけであれば宿泊施設に3日間泊まる必要はありません。
そのような取り組みをしたのは、経営理念・方針の作成を経営の最重要課題として優先順位が下がらないようにして、「経営理念を心に描き、自分たちのものとする」ためです。
そこで、まず『時間と場所』を設定しました。
時間:三日三晩の宿泊
場所:社外の宿泊施設
『時間と場所』を決めることで「緊急度という下りのエスカレーター」に楔(くさび)を打ち込み、自らやらざるおえない状況に追い込んだのです。
普段の業務を離れた場所で実施するため、よほどの緊急事項でない限り外部からの連絡が入りません。3日間を経営理念・方針の作成だけに集中できる環境をつくりました。
そのように言うと多くの中小企業経営者は、「忙しくて3日も時間が取れない」と言います。
しかし、よく考えてみてください。10年後の自分達の将来の姿を描くためのたった3日間です。3650日(=10年×356日)の内の3日で、割合でみると僅か0.08%の時間です。まさに一瞬です。
事例で取り上げたA社では、たった3日間でしたが自社を再生するという得がたい3日間になりました。そして、10年以上経った今も会社が存続し、 順調に事業経営がされています。
まさに、10年の計はこの3日間にありました。
次は、経営理念を『心に描くこと』です。
心に描かざるものは実現しない。
書かざるものは実現しない。
語らざるものは実現しない。
行動せざるものは実現しない。
ものごとを実現するためには「描き、書き、語り、行動する」ことが大切です(個人にとっても同じ)。
特に経営理念の作成・浸透で大事なことは、それを『心に描くこと』です。
経営理念を作成すれば、どの会社もそれを書いて文章にします。書いたものを掲示したり、社員にカードで配ったりします。
しかし、経営理念を経営陣や社員の「心に描くこと」に取り組む会社は少ない。
書くことはしても、心に描くことをしなければ効果はない。
「心に描くこと」とは、本当に大切だということを気持ちで感じることです。自分が本当に大切だと感じていないことは、消えてなくなってしまう。
例えば、人は約束を忘れても、食べ物を食べることは忘れない。食べることは自分が生命を維持し、生きていくために極めて重要なことだからです。お腹がすいたら「食べたい」と感じる。頭で理解するのでなく、気持ち(心)で感じる。
「心に描くとは」頭で理解することでなく、自分のこととして心で感じることです。
そのためには「内省すること」が大切です。
自社及び自己の現状を深く見つめ直すことです。
前話で紹介したA社では、事業の存在意義、理念を内省する討議を通して、組織の理念が自分達の存在意義、生き方へと昇華させていきました。
また以前に事例で取り上げたジョンソン&ジョンソンでは、クレドー・チャレンジミーティング(クレドに関する議論)やクレドー・サーベイ(社員意識調査)を通して、全社員が経営理念を内省し、見直す取り組みをしています。

内省してる?
これまでの自社(自己)・・・現状を内省する(認識する)
自社(自己)の存在意義・・・存在価値を内省する(問い直す)
これからの自社(自己)・・・将来(理念・方針)をつくる
経営陣が語り合い、経営理念をしっかりと「心に描くこと」ができた時、それが自分達の存在意義へと変化する。
そして、バラバラの人の集団が一枚岩の組織(コミュニティ)へと生まれ変わり、将来へ進むための熱意と推進力が生まれます。
『小利を見れば則ち大事成らず』(論語)
(目の前の小さな利益にとらわれると、本当に重要なことが見失われる)
『組織は熱意あふれる人間のコミュニティとなったとき、最もうまく機能する』(ヘンリー・ミンツバーグ)
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